黄昏た夏


自分で作った曲達の中で初めて納得のいった曲が「黄昏」という曲だ。この曲は私の実体験を全てに作り上げた曲であり、小規模ではあるが幾らかの人々に聞いてもらえていることが素直に嬉しいと思う。夕の最中、誰も通らない階段に座り泣いていた夏の日。窓からは消え得るような陽の光が飛び込んで、私の涙とともに伝っていた。不安と孤独と自分に押しつぶされそうでたまらなかったが、自然と曲を書く指は止まることをしなかった。灰すらも溶けるような暑さすらも忘れてただひたすらに曲を。そして出来上がった、「黄昏」という曲だ。音数も少なく迫力こそ皆無だが、そのしんとした雰囲気がまたあの夏を思い出させてくれるような気がしてならない。私の大好きなジブリ映画「千と千尋の神隠し」の劇中歌「あの夏へ」をよく聞いていた夏。今聴くと所々に面影がふらついている。ピアノのメロディやCメロの歌詞などはまさに千と千尋の世界を映し出しているかのように聴こえる。当時はそんなことは微塵も考えずに作っていたのだが自分の人生に影響を与えてくれるようなものは、記憶の根底からも結びついてくるのだな、と感じた。黄昏。眺める夕日。美しく、儚い。独りで眺めていたあの夏を忘れる事はないだろう。

阿亀屋 Original「黄昏」Okameya / Tasogare